はじめに
超高齢化社会となり、介護タクシーのニーズは確実に増加しています。しかし、介護タクシー事業者に特化した「補助金」や「助成金」は、現時点ではまだ少ないのが実情です。
インターネットなどで調べていただければわかるように、介護タクシー事業を開業しただけで対象となる補助金や助成金は存在しません。
事業そのものに対する直接的な助成はほとんどないのが現状です。
一方で、福祉車両(車いす移動車など)の購入については、一部の自治体で購入費用に対して助成金や補助金を支給している場合があります。ただし、これらは自治体ごとに制度が異なります。
さらに、助成金や補助金を設けている自治体でも、年度によって制度の内容や条件が大きく変更されることがあります。
そのため、開業時には、最新の情報を確認し、利用可能な助成金や補助金がないか調べることが重要です。
助成金と補助金の違い
助成金と補助金は、どちらも国や地方公共団体などから支給されるお金ですが、それぞれに違いがあります。
助成金は、受給要件を満たしていれば基本的に受け取ることができる制度です。
例えば、厚生労働省が提供する雇用関係助成金は、従業員を雇用する際に活用できます。
新規雇用や雇用改善に関する助成金があり、要件を満たせば基本的に支給されます。
介護タクシー事業そのものに特化した助成金は少ないものの、今後従業員を雇用する際にこれらの助成金を活用することが可能です。
一方、補助金は、事前に採択件数や補助金額が決まっているため、要件を満たして申請しても採択されなければ受け取ることができません。
多くの場合、応募件数が採択件数を上回るため、必ずしも受給できるわけではない点が助成金との大きな違いです。
なお、助成金についても国の予算内で運営されており、予算が上限に達すると申請が打ち切られることはあります。ただし、基本的には要件を満たしていれば支給される点で補助金とは異なります。
補助金は、採択されるかどうかが補助金団体の裁量に委ねられます。採択基準や申請内容の評価も補助金団体によって決定されるため、結果は予測しづらい部分があります。
介護タクシー事業者が利用できる補助金の一例として、中小企業庁が公募している「小規模事業者持続化補助金」があります。これは、事業の持続や発展を支援するための補助金で、事業計画を提出して採択されれば利用可能です。
小規模事業者持続化補助金とは
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者を対象に、販路開拓を目的とした取り組みにかかる経費の一部を補助してもらえる制度です。
介護タクシー事業においては、以下のような取り組みが該当する可能性があります。
- ウェブサイトを構築し、宣伝用のチラシを作成する
- 民間救急事業を開始するためにストレッチャーなどの機材を購入する
この補助金は、個人・法人を問わず申請が可能で、最大50万円まで支給されます。事業の発展を支援する大きなチャンスです。ただし、以下の注意点に留意する必要があります。
注意点
補助金支給決定前の購入は対象外
補助金が支給される前に購入したものについては、補助金の対象外となります。補助金を活用したい場合は、事前に審査結果を待つ必要があります。
新規事業開始には一定の時間がかかる
この補助金は、年間に数回の申し込み機会が設けられていますが、審査結果が出るまでには受付締切から2~3ヶ月程度かかります。そのため、申請準備段階から半年程度は新規事業を始められない可能性があります。
商工会・商工会議所の支援が必要
申請書類の作成は、申請者自身だけで行うのではなく、地元の商工会または商工会議所の相談員の指導を受けながら進めます。
さらに、商工会・商工会議所が作成する書類も必要です。そのため、締切に間に合うよう、早めに準備を始めることが重要です。
【補助金の対象者】
- 個人事業や会社(営利法人)で常時使用する従業員の数が5人以下(商業・サービス業)
- 一般社団法人、NPO法人等の非営利法人は対象外
- 申請時点で開業していない創業予定者は対象外
【対象経費】
- ストレッチャー等の機材購入費用
- 介護タクシー事業のウェブサイト構築、宣伝用チラシ作成・広告掲載費用 etc
【支給金額】
- 補助額:上限額50万円(一般型)
- 補助率:補助対象経費の2/3以内
補助金が無事に支給決定されたとしても、補助金はすぐに受け取れるわけではありません。
補助金は後払いで支給されるため、申請者が補助対象経費を事前に支払った後で、補助金が振り込まれる仕組みです。
ですので、補助対象経費分の自己資金をあらかじめ用意しておく必要があります。
また、補助金は必ず受け取れるものではありません。
さらに、申請には書類作成や手続きに多くの手間や時間がかかります。
そのため、「補助金を受け取れる金額」と「申請にかかる手間・時間」を総合的に考慮した上で、申請するかどうかを判断することをお勧めします。