監修:行政書士・社会保険労務士 津田 拓也(『介護タクシー 開業準備・許可申請・事業運営ハンドブック』〔日本法令〕著者)
介護タクシー(福祉タクシー)は、介護が必要な方や体の不自由な方の通院・入退院・外出を支える、地域に欠かせない移動手段です。
ただし、お金を受け取って人を運ぶ「運送事業」なので、車と免許があればすぐに始められるわけではありません。事業の計画を立て、物件と車両をそろえ、許可を受け、許可後の手続きを済ませて、はじめて営業を始められます。
この記事では、介護タクシーの開業を考え始めた方に向けて、開業までの全体像と10のステップ、必要な資格と費用、開業後に続く手続きを、順を追って説明します。許可の要件や申請書類の詳しい内容は「介護タクシー許可とは?」で解説しています。
介護タクシー開業の全体像
開業までの道のりは、大きく3つの段階に分かれます。
介護タクシー開業までの全体像
- 1
準備
事業の計画を立て、資格・営業所・車庫・車両・資金をそろえます。あわせて申請書類を作成します。
ステップ1〜4 - 2
許可申請と審査標準処理期間 2〜3か月
運輸支局に申請し、書類の審査と法令知識の確認を受けます。許可書を受け取り、登録免許税を納めます。
ステップ5〜8。※標準処理期間は、関東運輸局が2か月、近畿運輸局が3か月です。
準備から許可まで、最短でも約4か月
- 3
開業準備と運輸開始
運賃の認可、緑ナンバーの登録、保険、車両の表示などを整え、運輸を始めます。開始後に運輸開始届を出します。
ステップ9〜10
許可を受けたあとは、許可書に付された条件の期限までに運輸を始めます。関東運輸局・近畿運輸局とも、許可書の条件で「許可日から6か月以内に事業を開始すること」とされています。期限までに事業を始めないと、許可の取消しなどの処分の対象になり得るため、ご自身の許可書の条件を必ず確認してください。
期間の目安は「介護タクシー開業までの期間はどれくらい?」でも解説しています。
介護タクシーは一人で開業できる?
介護タクシーは、個人事業主として、車両1台から開業できます。会社を作らなくても許可を申請できます。
ご自身が運転する場合は、ご自身に二種免許が必要です。運転者を雇う場合は、その運転者が二種免許を持っていれば、申請者本人が二種免許を持っていなくても申請できます(「二種免許がないと介護タクシーは開業できない?」)。
許可を受けるには、運転者のほかに、運行管理や車両の整備管理などの体制も整えます。関東運輸局管内では、運転者・運行管理者・整備管理者を1人で兼務できるため、ご自身が運転者として乗務しながらこれらの役割も担い、一人で開業できます。兼務の取扱いは運輸局によって異なる場合があり、運転者と運行管理者の兼務が認められない地域では2人以上が必要です。詳しくは「介護タクシーは一人で開業できる?」をご覧ください。
一人で始めると、運転と介助のほかに、予約の受付、ケアマネジャーへの営業、車両の点検、経理なども自分で担います。許可を受けられるかとあわせて、1日の予定が無理なく回るかも考えておきましょう(「開業で成功する人・失敗する人の違い」)。
状況別の注意点は、次の記事にまとめています。
- 個人と法人のどちらで始めるか:「介護タクシーは個人事業主と法人どちらで開業する?」
- 自宅を営業所にしたい:「介護タクシーは自宅で開業できる?」
- 定年後に始めたい:「定年退職後に介護タクシーを開業するには?」
- タクシーの経験がない:「タクシー未経験でも介護タクシーは開業できる」
- 訪問介護事業所が始める:「訪問介護事業所が介護保険タクシーを始めるには?」
介護タクシーの開業に必要な資格
必ず必要なのは、運転者の二種免許(普通自動車第二種免許など)です。
介護の資格は、使う車両によって扱いが変わります。関東運輸局の審査基準では、次のとおりです。
| 使う車両 | 運転者の介護の資格 |
|---|---|
| 福祉自動車 リフト・スロープ・回転シートなどを備えた車両 | 努力義務。介護福祉士、訪問介護員、サービス介助士などの資格を持つか、所定の研修を修了するよう努めます。 |
| 一般車両 セダン型などの車両 | 必須。介護福祉士、訪問介護員、居宅介護従業者などの資格を持つ人が乗務します。 |
福祉自動車を使う場合でも、利用者は介助を期待して予約されることが多いものです。介護職員初任者研修などを修了しておくと安心です。資格の種類と、取得にかかる期間・費用は「介護タクシー開業までの資格取得ロードマップ」で解説しています。
このほか、申請者(法人の場合は常勤の役員)には、事業に必要な法令の知識が求められます。確認の方法は運輸局によって異なります(ステップ6で説明します)。
介護タクシーの開業にかかる費用と自己資金
開業資金は、車両の買い方、営業所・車庫の用意の仕方、人を雇うかどうかで大きく変わります。「いくらあれば足りる」と一律には決まりません。
主に、次の費用を見積もります。
- 車両:福祉車両の購入費またはリース料、登録などの諸費用、装備、車体の表示
- 営業所・車庫:家賃・駐車場代、敷金などの初期費用
- 保険:自賠責保険と、事業用に対応した任意保険
- タクシーメーター:メーターを使う運賃にする場合
- 登録免許税:許可を受けるときに3万円
- 開業後の運転資金:燃料費、家賃、通信費、修繕費、人件費(雇う場合)など
費用の目安(当事務所でご支援した方の例)
車両1台・1人で開業する場合の目安です。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 車両(中古) | 普通自動車:160万〜200万円 軽自動車:100万〜160万円 ご支援した方の約7割が中古車です。 |
| 車両(新車) | 普通自動車:300万円前後 軽自動車:150万〜190万円 |
| タクシーメーター | 20万円前後(メーターを使う運賃にする場合) |
| 営業所の初期費用 | 0〜25万円(自宅を使う場合は0円。借りる場合は敷金・礼金など) |
| 車庫の初期費用 | 0〜5万円 |
| 任意保険(年額) | 10万〜25万円 |
| 登録免許税 | 3万円(許可を受けるときに納付) |
| 二種免許の取得 | 20万〜30万円(お持ちでない場合) |
| 介護資格の研修 | 3万〜10万円(介護職員初任者研修など) |
| 開業当初の運転資金 | 100万〜300万円 |
| 行政書士への報酬 | 当法人は11万円〜18.7万円(税込)(依頼する場合) |
車両や保険など、開業時にかかる費用(運転資金を除く)は、200万円前後になる方が多くなっています。ご支援した方は、これとは別に、開業当初の運転資金として100万〜300万円を用意しています。
費用が想定より膨らみやすいのは、次のような場合です。
- 自宅で開業する予定だったが、要件に合わず営業所を借りることになった
- 中古の福祉車両が見つからず、新車や新古車を買うことになった
※車両の選び方や地域によって、金額は大きく変わります。表は当事務所でご支援した方の目安で、必要な金額を示すものではありません。福祉装備は、装備済みの福祉車両を購入する方がほとんどです。
許可の審査では、資金計画も確認されます。関東運輸局・近畿運輸局の審査基準では、所要資金の50%以上、かつ、事業開始当初に要する資金の100%以上の自己資金を、申請日以降、常に確保している必要があります。「半分だけ用意すればよい」という基準ではありません。
また、審査の基準を満たす金額があれば、開業後の資金繰りも安心というわけではありません。売上が安定するまでの支払いも見込んでおきましょう。
費用の内訳と試算の考え方は「介護タクシーの開業資金はいくら必要?」、審査での計算方法は「介護タクシー許可の資金要件」、開業後の経費は「介護タクシーの経費はいくらかかる?」で解説しています。補助金・助成金は、募集の時期や対象となる経費が限られます。使えることを前提にせず、計画を立てましょう(「介護タクシー開業の補助金・助成金」)。
介護タクシー開業までの流れ(10ステップ)
ここからは、開業までの手順を10のステップに分けて説明します。ステップ1〜4が申請までの準備、5〜8が申請から許可まで、9〜10が許可後の準備と運輸の開始です。
ステップ1 事業の計画を立て、許可の要件を確かめる
まず、誰の、どんな移動を担うのかを具体的にします。通院、入退院・転院、施設への送迎など、地域でどんな依頼が見込めるか、料金をいくらにするか、1日に何件回れるかを考えます(「介護タクシー事業は成り立つ?」)。
あわせて、許可の要件を確かめます。要件は、営業所・車庫・休憩施設・車両・人員・資金・損害賠償能力・法令遵守に分かれます。物件や車両を契約する前に確かめることが大切です(「介護タクシー許可の要件」)。
ステップ2 二種免許と介護の資格を準備する
二種免許を持っていない場合は、取得から始めます。介護の資格も、使う車両によっては必要です。取得には時間がかかるため、物件探しと並行して早めに進めましょう。
ステップ3 営業所・車庫・車両を確保する
営業所・車庫・休憩施設は、1年以上使える契約(使用権原)が必要です。車庫は原則として営業所に併設し、できない場合は営業所から直線2km以内に置きます(関東運輸局の基準。遠隔点呼を行う場合を除きます)。前面道路の幅も確認します(「車庫・駐車場の要件」「営業所の要件」)。
建物が建てられる地域や用途にも制限があります。自宅や賃貸物件を使う場合は、用途地域や契約上の用途を先に確認します(「営業所が置けない地域とは?」)。
車両は、申請の時点で、売買契約書やリース契約書などで使えることを示します。購入の時期や方法は「開業前に車両を購入しても大丈夫?」で解説しています。
ステップ4 申請書類を作成し、添付書類を集める
経営許可申請書と事業計画、営業所・車庫の図面、資金計画、残高証明書、任意保険の見積書などをそろえます。書類の名称や様式は運輸局によって異なります(「必要書類一覧【関東運輸局管轄版】」「必要書類一覧【近畿運輸局管轄版】」)。
書類に不備があると補正になり、その分許可が遅れます。補正が出やすい点は「補正が出やすいポイント」にまとめています。
ステップ5 運輸支局に許可を申請する
申請書は、営業所の所在地を管轄する運輸支局に提出します(「介護タクシー許可の申請先はどこ?」)。運輸支局によっては、運賃・料金の認可申請もこのときに提出します(「介護タクシーの運賃認可とは?」)。
自己資金は、申請したあとも許可が出るまで確保しておく必要があります。申請中に車両代などを支払う予定がある場合は、残高が基準を下回らないか、事前に確認しましょう。
ステップ6 法令の知識の確認を受ける
申請者(法人の場合は常勤の役員)が、事業に必要な法令の知識を持っているかを確認されます。確認の方法は、運輸局によって異なります。
- 関東運輸局:福祉輸送事業限定(患者等の輸送サービスに限定する事業)の場合は、法令試験を省略できます。
- 近畿運輸局:2026年10月1日以降の申請は、法令試験に代えて、指定されたURLで設問に回答する方法になりました。
- その他の運輸局:法令試験が行われる場合は、申請者が受験します。
詳しくは「介護タクシー許可の法令試験とは?」をご覧ください。
ステップ7 運輸局の審査を受ける
許可の標準処理期間は、関東運輸局が2か月、近畿運輸局が3か月です。これは、申請書類に不備がない場合の期間です。補正が必要になると、その分長くなります。
ステップ8 許可書を受け取り、登録免許税を納める
許可書は、申請した運輸支局で交付されます。許可を受けるときに、登録免許税3万円を納めます。
運賃・料金の認可は、許可と同時に受ける場合と、許可のあとに申請する場合があります。管轄の運輸支局の案内に従います。
ステップ9 開業の準備を整える
許可を受けただけでは、まだ営業を始められません。主に次の準備を進めます。
- 運賃・料金の認可と、運送約款の準備(営業所に掲示します)
- 事業用自動車の登録(緑ナンバー)
- タクシーメーターの取付け(メーターを使う運賃の場合)
- 事業用に対応した任意保険への加入
- 車体・車内の表示
- 運転者の適性診断・健康状態の確認と、指導の体制づくり
- 社会保険・労働保険の加入(加入義務がある場合)
それぞれの内容は「介護タクシー許可が下りたらやること」で解説しています。車体の表示は「関東運輸局管内」「近畿運輸局管内」、適性診断は「許可後の適性診断・健康診断とは?」、保険は「社会保険加入は必要?」をご覧ください。
ステップ10 運輸を開始し、運輸開始届を出す
準備が整ったら、運輸を開始します。運輸開始届は、運輸を開始した後、遅滞なく管轄の運輸支局に提出します。
運輸を開始する期限(許可書に付された期限)とは別の手続きなので、期限まで届出を待ってよいわけではありません。提出時期と添付書類は「介護タクシーの運輸開始届とは?」で解説しています。
開業後に続く手続きと運営
運輸を始めたあとも、事業者としての手続きが続きます。
- 毎年の報告:輸送実績報告書を提出します。関東運輸局の案内では、前年4月1日〜3月31日の実績を5月31日までに提出します(「介護タクシーの実績報告とは?」)。
- 変更の手続き:営業所・車庫の移転や増車などは、内容に応じて認可や届出が必要です(「開業後の変更手続き一覧」)。
- 介護保険:許可を受けただけでは、介護保険の「通院等乗降介助」は行えません。訪問介護事業所の指定を別に受ける必要があります(「介護保険タクシー許可とは?」)。
開業直後は、利用者を増やすことが最初の課題です。ケアマネジャーや病院への案内の仕方は「開業後に最初の利用者を獲得するには?」「ケアマネ営業から」、売上の目安は「介護タクシーの売上・収入はどれくらい?」で解説しています。
開業前に確認したいチェックリスト
- 誰の、どんな移動を担うのかを、地域の需要とあわせて具体的にした
- 営業所・車庫・休憩施設が要件に合うかを、契約の前に確認した
- 運転者の二種免許と、使う車両に応じた介護の資格を準備した
- 自己資金を、申請から許可まで確保できる計画にした
- 売上が安定するまでの運転資金も見込んだ
- 許可後の準備(運賃・登録・保険・表示)と、運輸開始の期限を確認した
- 介護保険を使う事業にするかどうかを決めた
許可申請の前につまずきやすい点は「開業で成功する人・失敗する人の違い」にまとめています。

介護タクシー開業に関するよくある質問
介護タクシーは一人で開業できますか?
関東運輸局管内では、運転者・運行管理者・整備管理者を1人で兼務できるため、個人事業主として、車両1台・一人で開業できます。兼務の取扱いは運輸局によって異なる場合があり、運転者と運行管理者の兼務が認められない地域では2人以上が必要です。「介護タクシーは一人で開業できる?」もあわせてご覧ください。
開業までにどれくらいの期間がかかりますか?
準備から許可まで、最短でも約4か月を見込みます。審査の標準処理期間は、関東運輸局が2か月、近畿運輸局が3か月で、その前に物件・車両・書類の準備が必要です。
当事務所でご支援した方の例では、ご相談から申請までに1か月半〜2か月、許可を受けてから運輸を始めるまでに2か月前後かかっています。
開業資金はいくら必要ですか?
車両の買い方、営業所・車庫の用意の仕方、人を雇うかどうかで変わるため、一律には決まりません。許可の審査では、所要資金の50%以上、かつ、事業開始当初に要する資金の100%以上の自己資金が必要です(関東運輸局の基準)。
介護タクシーの許可を受ければ、介護保険も使えますか?
使えません。介護保険の「通院等乗降介助」を行うには、訪問介護事業所の指定を別に受ける必要があります。
自宅で開業できますか?
用途地域などの関係法令、使用権原、休憩施設などの要件を満たせば、自宅を営業所にできます。注意点は「介護タクシーは自宅で開業できる?」をご覧ください。
この記事で参照した公式資料
制度・資料の確認日:2026年10月24日。最新の取扱いは、管轄の運輸局の案内でご確認ください。
- 関東運輸局「介護タクシー事業の経営許可までの流れ」
- 関東運輸局「許可申請書作成の手引き(福祉輸送限定用)」
- 関東運輸局「許可申請審査基準」「許可申請審査基準細部取扱い」
- 関東運輸局「道路運送法上の申請に対する処分に関する標準処理期間について」
- 近畿運輸局「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業)の許可等の申請に関する審査基準について」「同 細部取扱い」
- 近畿運輸局「一般旅客自動車運送事業の許可、事業計画の変更認可等に関する標準処理期間について」
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介護タクシーの許可申請サポート
〜最寄りの頼れる専門家〜
介護タクシーの許可申請は、行政書士法人MOYORICへ
- 申請書類の作成から、運輸局との打ち合わせ・申請まで代行します
- お申し込みから開業までの期間のご相談は、報酬に含まれます
- 対応地域:東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県/大阪府・兵庫県・京都府・奈良県(一部地域を除く)
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