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介護タクシー開業の流れと準備|資格・費用・許可から運輸開始まで

2021 8/31
介護タクシー許可の要件
2021年8月31日
手続きの流れ

この記事の要点

  • 介護タクシーを開業するには、運輸支局に申請して「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)」の許可を受けます。
  • 個人でも法人でも開業でき、車両1台・一人から始められます。運転者には二種免許が必要です。
  • 準備から許可までは、最短でも約4か月です。許可のあとも、運賃の認可や緑ナンバーの登録などを済ませてから運輸を始めます。
  • 許可の基準を満たすことと、事業を続けられることは別です。地域の需要と資金計画も、あわせて確かめます。

監修:行政書士・社会保険労務士 津田 拓也(『介護タクシー 開業準備・許可申請・事業運営ハンドブック』〔日本法令〕著者)

介護タクシー(福祉タクシー)は、介護が必要な方や体の不自由な方の通院・入退院・外出を支える、地域に欠かせない移動手段です。

ただし、お金を受け取って人を運ぶ「運送事業」なので、車と免許があればすぐに始められるわけではありません。事業の計画を立て、物件と車両をそろえ、許可を受け、許可後の手続きを済ませて、はじめて営業を始められます。

この記事では、介護タクシーの開業を考え始めた方に向けて、開業までの全体像と10のステップ、必要な資格と費用、開業後に続く手続きを、順を追って説明します。許可の要件や申請書類の詳しい内容は「介護タクシー許可とは?」で解説しています。


目次

介護タクシー開業の全体像

開業までの道のりは、大きく3つの段階に分かれます。

介護タクシー開業までの全体像

  1. 1

    準備

    事業の計画を立て、資格・営業所・車庫・車両・資金をそろえます。あわせて申請書類を作成します。
    ステップ1〜4

  2. 2

    許可申請と審査標準処理期間 2〜3か月

    運輸支局に申請し、書類の審査と法令知識の確認を受けます。許可書を受け取り、登録免許税を納めます。
    ステップ5〜8。※標準処理期間は、関東運輸局が2か月、近畿運輸局が3か月です。

準備から許可まで、最短でも約4か月

  1. 3

    開業準備と運輸開始

    運賃の認可、緑ナンバーの登録、保険、車両の表示などを整え、運輸を始めます。開始後に運輸開始届を出します。
    ステップ9〜10

許可を受けたあとは、許可書に付された条件の期限までに運輸を始めます。関東運輸局・近畿運輸局とも、許可書の条件で「許可日から6か月以内に事業を開始すること」とされています。期限までに事業を始めないと、許可の取消しなどの処分の対象になり得るため、ご自身の許可書の条件を必ず確認してください。

期間の目安は「介護タクシー開業までの期間はどれくらい?」でも解説しています。


介護タクシーは一人で開業できる?

介護タクシーは、個人事業主として、車両1台から開業できます。会社を作らなくても許可を申請できます。

ご自身が運転する場合は、ご自身に二種免許が必要です。運転者を雇う場合は、その運転者が二種免許を持っていれば、申請者本人が二種免許を持っていなくても申請できます(「二種免許がないと介護タクシーは開業できない?」)。

許可を受けるには、運転者のほかに、運行管理や車両の整備管理などの体制も整えます。関東運輸局管内では、運転者・運行管理者・整備管理者を1人で兼務できるため、ご自身が運転者として乗務しながらこれらの役割も担い、一人で開業できます。兼務の取扱いは運輸局によって異なる場合があり、運転者と運行管理者の兼務が認められない地域では2人以上が必要です。詳しくは「介護タクシーは一人で開業できる?」をご覧ください。

一人で始めると、運転と介助のほかに、予約の受付、ケアマネジャーへの営業、車両の点検、経理なども自分で担います。許可を受けられるかとあわせて、1日の予定が無理なく回るかも考えておきましょう(「開業で成功する人・失敗する人の違い」)。

状況別の注意点は、次の記事にまとめています。

  1. 個人と法人のどちらで始めるか:「介護タクシーは個人事業主と法人どちらで開業する?」
  2. 自宅を営業所にしたい:「介護タクシーは自宅で開業できる?」
  3. 定年後に始めたい:「定年退職後に介護タクシーを開業するには?」
  4. タクシーの経験がない:「タクシー未経験でも介護タクシーは開業できる」
  5. 訪問介護事業所が始める:「訪問介護事業所が介護保険タクシーを始めるには?」

介護タクシーの開業に必要な資格

必ず必要なのは、運転者の二種免許(普通自動車第二種免許など)です。

介護の資格は、使う車両によって扱いが変わります。関東運輸局の審査基準では、次のとおりです。

使う車両運転者の介護の資格
福祉自動車
リフト・スロープ・回転シートなどを備えた車両
努力義務。介護福祉士、訪問介護員、サービス介助士などの資格を持つか、所定の研修を修了するよう努めます。
一般車両
セダン型などの車両
必須。介護福祉士、訪問介護員、居宅介護従業者などの資格を持つ人が乗務します。

福祉自動車を使う場合でも、利用者は介助を期待して予約されることが多いものです。介護職員初任者研修などを修了しておくと安心です。資格の種類と、取得にかかる期間・費用は「介護タクシー開業までの資格取得ロードマップ」で解説しています。

このほか、申請者(法人の場合は常勤の役員)には、事業に必要な法令の知識が求められます。確認の方法は運輸局によって異なります(ステップ6で説明します)。


介護タクシーの開業にかかる費用と自己資金

開業資金は、車両の買い方、営業所・車庫の用意の仕方、人を雇うかどうかで大きく変わります。「いくらあれば足りる」と一律には決まりません。

主に、次の費用を見積もります。

  • 車両:福祉車両の購入費またはリース料、登録などの諸費用、装備、車体の表示
  • 営業所・車庫:家賃・駐車場代、敷金などの初期費用
  • 保険:自賠責保険と、事業用に対応した任意保険
  • タクシーメーター:メーターを使う運賃にする場合
  • 登録免許税:許可を受けるときに3万円
  • 開業後の運転資金:燃料費、家賃、通信費、修繕費、人件費(雇う場合)など

費用の目安(当事務所でご支援した方の例)

車両1台・1人で開業する場合の目安です。

項目目安
車両(中古)普通自動車:160万〜200万円
軽自動車:100万〜160万円
ご支援した方の約7割が中古車です。
車両(新車)普通自動車:300万円前後
軽自動車:150万〜190万円
タクシーメーター20万円前後(メーターを使う運賃にする場合)
営業所の初期費用0〜25万円(自宅を使う場合は0円。借りる場合は敷金・礼金など)
車庫の初期費用0〜5万円
任意保険(年額)10万〜25万円
登録免許税3万円(許可を受けるときに納付)
二種免許の取得20万〜30万円(お持ちでない場合)
介護資格の研修3万〜10万円(介護職員初任者研修など)
開業当初の運転資金100万〜300万円
行政書士への報酬当法人は11万円〜18.7万円(税込)(依頼する場合)

車両や保険など、開業時にかかる費用(運転資金を除く)は、200万円前後になる方が多くなっています。ご支援した方は、これとは別に、開業当初の運転資金として100万〜300万円を用意しています。

費用が想定より膨らみやすいのは、次のような場合です。

  • 自宅で開業する予定だったが、要件に合わず営業所を借りることになった
  • 中古の福祉車両が見つからず、新車や新古車を買うことになった

※車両の選び方や地域によって、金額は大きく変わります。表は当事務所でご支援した方の目安で、必要な金額を示すものではありません。福祉装備は、装備済みの福祉車両を購入する方がほとんどです。

許可の審査では、資金計画も確認されます。関東運輸局・近畿運輸局の審査基準では、所要資金の50%以上、かつ、事業開始当初に要する資金の100%以上の自己資金を、申請日以降、常に確保している必要があります。「半分だけ用意すればよい」という基準ではありません。

また、審査の基準を満たす金額があれば、開業後の資金繰りも安心というわけではありません。売上が安定するまでの支払いも見込んでおきましょう。

費用の内訳と試算の考え方は「介護タクシーの開業資金はいくら必要?」、審査での計算方法は「介護タクシー許可の資金要件」、開業後の経費は「介護タクシーの経費はいくらかかる?」で解説しています。補助金・助成金は、募集の時期や対象となる経費が限られます。使えることを前提にせず、計画を立てましょう(「介護タクシー開業の補助金・助成金」)。


介護タクシー開業までの流れ(10ステップ)

ここからは、開業までの手順を10のステップに分けて説明します。ステップ1〜4が申請までの準備、5〜8が申請から許可まで、9〜10が許可後の準備と運輸の開始です。

ステップ1 事業の計画を立て、許可の要件を確かめる

まず、誰の、どんな移動を担うのかを具体的にします。通院、入退院・転院、施設への送迎など、地域でどんな依頼が見込めるか、料金をいくらにするか、1日に何件回れるかを考えます(「介護タクシー事業は成り立つ?」)。

あわせて、許可の要件を確かめます。要件は、営業所・車庫・休憩施設・車両・人員・資金・損害賠償能力・法令遵守に分かれます。物件や車両を契約する前に確かめることが大切です(「介護タクシー許可の要件」)。

ステップ2 二種免許と介護の資格を準備する

二種免許を持っていない場合は、取得から始めます。介護の資格も、使う車両によっては必要です。取得には時間がかかるため、物件探しと並行して早めに進めましょう。

ステップ3 営業所・車庫・車両を確保する

営業所・車庫・休憩施設は、1年以上使える契約(使用権原)が必要です。車庫は原則として営業所に併設し、できない場合は営業所から直線2km以内に置きます(関東運輸局の基準。遠隔点呼を行う場合を除きます)。前面道路の幅も確認します(「車庫・駐車場の要件」「営業所の要件」)。

建物が建てられる地域や用途にも制限があります。自宅や賃貸物件を使う場合は、用途地域や契約上の用途を先に確認します(「営業所が置けない地域とは?」)。

車両は、申請の時点で、売買契約書やリース契約書などで使えることを示します。購入の時期や方法は「開業前に車両を購入しても大丈夫?」で解説しています。

ステップ4 申請書類を作成し、添付書類を集める

経営許可申請書と事業計画、営業所・車庫の図面、資金計画、残高証明書、任意保険の見積書などをそろえます。書類の名称や様式は運輸局によって異なります(「必要書類一覧【関東運輸局管轄版】」「必要書類一覧【近畿運輸局管轄版】」)。

書類に不備があると補正になり、その分許可が遅れます。補正が出やすい点は「補正が出やすいポイント」にまとめています。

ステップ5 運輸支局に許可を申請する

申請書は、営業所の所在地を管轄する運輸支局に提出します(「介護タクシー許可の申請先はどこ?」)。運輸支局によっては、運賃・料金の認可申請もこのときに提出します(「介護タクシーの運賃認可とは?」)。

自己資金は、申請したあとも許可が出るまで確保しておく必要があります。申請中に車両代などを支払う予定がある場合は、残高が基準を下回らないか、事前に確認しましょう。

ステップ6 法令の知識の確認を受ける

申請者(法人の場合は常勤の役員)が、事業に必要な法令の知識を持っているかを確認されます。確認の方法は、運輸局によって異なります。

  • 関東運輸局:福祉輸送事業限定(患者等の輸送サービスに限定する事業)の場合は、法令試験を省略できます。
  • 近畿運輸局:2026年10月1日以降の申請は、法令試験に代えて、指定されたURLで設問に回答する方法になりました。
  • その他の運輸局:法令試験が行われる場合は、申請者が受験します。

詳しくは「介護タクシー許可の法令試験とは?」をご覧ください。

ステップ7 運輸局の審査を受ける

許可の標準処理期間は、関東運輸局が2か月、近畿運輸局が3か月です。これは、申請書類に不備がない場合の期間です。補正が必要になると、その分長くなります。

ステップ8 許可書を受け取り、登録免許税を納める

許可書は、申請した運輸支局で交付されます。許可を受けるときに、登録免許税3万円を納めます。

運賃・料金の認可は、許可と同時に受ける場合と、許可のあとに申請する場合があります。管轄の運輸支局の案内に従います。

ステップ9 開業の準備を整える

許可を受けただけでは、まだ営業を始められません。主に次の準備を進めます。

  • 運賃・料金の認可と、運送約款の準備(営業所に掲示します)
  • 事業用自動車の登録(緑ナンバー)
  • タクシーメーターの取付け(メーターを使う運賃の場合)
  • 事業用に対応した任意保険への加入
  • 車体・車内の表示
  • 運転者の適性診断・健康状態の確認と、指導の体制づくり
  • 社会保険・労働保険の加入(加入義務がある場合)

それぞれの内容は「介護タクシー許可が下りたらやること」で解説しています。車体の表示は「関東運輸局管内」「近畿運輸局管内」、適性診断は「許可後の適性診断・健康診断とは?」、保険は「社会保険加入は必要?」をご覧ください。

ステップ10 運輸を開始し、運輸開始届を出す

準備が整ったら、運輸を開始します。運輸開始届は、運輸を開始した後、遅滞なく管轄の運輸支局に提出します。

運輸を開始する期限(許可書に付された期限)とは別の手続きなので、期限まで届出を待ってよいわけではありません。提出時期と添付書類は「介護タクシーの運輸開始届とは?」で解説しています。


開業後に続く手続きと運営

運輸を始めたあとも、事業者としての手続きが続きます。

  1. 毎年の報告:輸送実績報告書を提出します。関東運輸局の案内では、前年4月1日〜3月31日の実績を5月31日までに提出します(「介護タクシーの実績報告とは?」)。
  2. 変更の手続き:営業所・車庫の移転や増車などは、内容に応じて認可や届出が必要です(「開業後の変更手続き一覧」)。
  3. 介護保険:許可を受けただけでは、介護保険の「通院等乗降介助」は行えません。訪問介護事業所の指定を別に受ける必要があります(「介護保険タクシー許可とは?」)。

開業直後は、利用者を増やすことが最初の課題です。ケアマネジャーや病院への案内の仕方は「開業後に最初の利用者を獲得するには?」「ケアマネ営業から」、売上の目安は「介護タクシーの売上・収入はどれくらい?」で解説しています。


開業前に確認したいチェックリスト

  • 誰の、どんな移動を担うのかを、地域の需要とあわせて具体的にした
  • 営業所・車庫・休憩施設が要件に合うかを、契約の前に確認した
  • 運転者の二種免許と、使う車両に応じた介護の資格を準備した
  • 自己資金を、申請から許可まで確保できる計画にした
  • 売上が安定するまでの運転資金も見込んだ
  • 許可後の準備(運賃・登録・保険・表示)と、運輸開始の期限を確認した
  • 介護保険を使う事業にするかどうかを決めた

許可申請の前につまずきやすい点は「開業で成功する人・失敗する人の違い」にまとめています。

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介護タクシー開業に関するよくある質問

介護タクシーは一人で開業できますか?

関東運輸局管内では、運転者・運行管理者・整備管理者を1人で兼務できるため、個人事業主として、車両1台・一人で開業できます。兼務の取扱いは運輸局によって異なる場合があり、運転者と運行管理者の兼務が認められない地域では2人以上が必要です。「介護タクシーは一人で開業できる?」もあわせてご覧ください。

開業までにどれくらいの期間がかかりますか?

準備から許可まで、最短でも約4か月を見込みます。審査の標準処理期間は、関東運輸局が2か月、近畿運輸局が3か月で、その前に物件・車両・書類の準備が必要です。

当事務所でご支援した方の例では、ご相談から申請までに1か月半〜2か月、許可を受けてから運輸を始めるまでに2か月前後かかっています。

開業資金はいくら必要ですか?

車両の買い方、営業所・車庫の用意の仕方、人を雇うかどうかで変わるため、一律には決まりません。許可の審査では、所要資金の50%以上、かつ、事業開始当初に要する資金の100%以上の自己資金が必要です(関東運輸局の基準)。

介護タクシーの許可を受ければ、介護保険も使えますか?

使えません。介護保険の「通院等乗降介助」を行うには、訪問介護事業所の指定を別に受ける必要があります。

自宅で開業できますか?

用途地域などの関係法令、使用権原、休憩施設などの要件を満たせば、自宅を営業所にできます。注意点は「介護タクシーは自宅で開業できる?」をご覧ください。

この記事で参照した公式資料

制度・資料の確認日:2026年10月24日。最新の取扱いは、管轄の運輸局の案内でご確認ください。

  • 関東運輸局「介護タクシー事業の経営許可までの流れ」
  • 関東運輸局「許可申請書作成の手引き(福祉輸送限定用)」
  • 関東運輸局「許可申請審査基準」「許可申請審査基準細部取扱い」
  • 関東運輸局「道路運送法上の申請に対する処分に関する標準処理期間について」
  • 近畿運輸局「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業)の許可等の申請に関する審査基準について」「同 細部取扱い」
  • 近畿運輸局「一般旅客自動車運送事業の許可、事業計画の変更認可等に関する標準処理期間について」
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この記事の監修者

津田 拓也のアバター 津田 拓也 代表社員行政書士・社会保険労務士

行政書士法人・社労士事務所MOYORIC代表。

介護タクシーの開業・許可取得から労務管理まで一貫してサポートしています。法令遵守と確実な申請実務を強みとしています。複雑で分かりにくい手続きも、専門用語を極力使わず丁寧にご説明することを心がけています。事業主様が安心して本業に専念できる環境づくりをお手伝いいたします。

著書:『介護タクシー 開業準備・許可申請・事業運営ハンドブック』(日本法令)

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