介護タクシーは、個人事業主でも法人でも開業できます。法人を設立すること自体が、福祉輸送限定の許可を受けるための必須条件ではありません。
ただし、設立時の手続き、社会保険・労働保険、将来の介護サービスへの展開、法人成りの際の許可の扱いは分けて考える必要があります。この記事では、個人と法人の違いを比較し、開業形態を決める前の確認点を整理します。
まず押さえたい3つのポイント
- 個人でも法人でも、運送事業の許可が必要です。税務署への開業届や会社設立だけでは営業を始められません。
- 保険は「個人か法人か」だけで決まりません。事業主・役員・従業員の立場と、雇用の実態を確認します。
- 法人化だけで介護保険が使えるわけではありません。訪問介護等の指定や、サービスごとの算定条件は別に確認します。
介護タクシーは個人・法人のどちらでも開業できます

この記事で扱うのは、一般乗用旅客自動車運送事業のうち、福祉輸送事業に限定した、いわゆる介護タクシーです。関東運輸局の申請の手引きも、法人と個人の申請者それぞれについて、記載方法や添付書類を示しています。
個人で始めることと、一般の「1人1車制個人タクシー」の許可を取ることは同じではありません。ご自身が行う事業に対応する許可の基準で準備します。
個人の場合も法人の場合も、車両、営業所・車庫、人員、資金、運行管理等の要件を確認します。一方で、申請者の名義、法人関係書類、資産や保険の確認方法まで、すべてが同一というわけではありません。
出典:関東運輸局「経営許可申請書作成の手引き(福祉輸送限定用)」(PDF)
許可要件の全体像は介護タクシー許可の総合解説、資格取得から営業開始までの手順は介護タクシー開業までの流れをご覧ください。
個人事業主と法人の主な違いを比較
比較するときは、設立費用だけでなく、開業後の管理と今後の事業計画も確認しましょう。次の表は選択のための整理であり、個別の許可や保険の適用を判定するものではありません。
| 比較する点 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 許可の名義 | 個人本人 | 法人 |
| 設立の準備 | 会社設立の登記は不要 | 定款・設立登記等を準備 |
| 保険の確認 | 事業主本人と従業員を区別 | 役員と従業員の適用を確認 |
| 事業の管理 | 本人の事業として会計・契約を管理 | 法人の会計・税務・登記事項等も管理 |
| 訪問介護への展開 | 指定要件と法人化の要否を先に確認 | 法人でも別途指定・体制整備が必要 |
個人で開業するメリットと注意点
会社設立の負担をかけずに準備できる
個人事業主として始める場合、株式会社や合同会社の設立登記は不要です。会社設立のための手続きと費用をかけずに、自分を事業主体として計画を立てられます。
ただし、「個人なら安く始められる」と「許可に必要な資金が少なくてよい」は別の話です。車両、営業所・車庫、保険、運転資金等は個別に計算しなければなりません。準備費用と資金繰りは介護タクシーの開業資金、審査上の計算は許可の資金要件で確認できます。
自宅開業や従業員の雇用は、別の条件で判断する
自宅の一部を営業所にする場合も、個人であることだけで認められるわけではありません。施設の使用権原、関係法令、営業所・車庫としての条件等を確認します。賃料が発生しない場合でも、設備や維持管理の費用までなくなるわけではありません。
また、個人事業主でも従業員を雇う計画は立てられます。その場合は、給与だけでなく、保険料や勤務体制の管理も準備に含めましょう。
開業届と運送事業の許可を混同しない
税務署への個人事業の開業届は、税務上の手続きです。開業届を出しただけで、有償で旅客を運送できるようにはなりません。許可申請と、許可後に営業を開始するための準備を別途進めます。
法人で開業する場合は、事業目的と継続的な管理も確認
共同で経営する、既存会社の事業として始める、将来の介護サービスへの展開も含めて準備するなど、法人を事業主体として計画する選択肢もあります。
株式会社や合同会社は、定款の作成や出資、設立登記等の準備が必要です。設立後も会計・税務申告・登記事項の管理等を続けるため、設立時だけでなく、毎年の管理に使う時間と費用も見積もりましょう。
既存法人で始める場合は、定款や登記の事業目的が予定する運送事業に対応しているか、法人名義での施設・車両の利用や資金の確保に問題がないかを確認します。目的の変更や登記手続きの要否は、許可申請の準備と合わせて事前に確認してください。
株式会社・合同会社以外の法人でも、その法人を規律する法令や定款等に照らした確認が必要です。「法人の種類を問わず、何も確認しなくてよい」という意味ではありません。
法人であれば必ず集客・融資・取引に有利になるとは限りません。安全な運行体制、相談への対応、サービス内容の説明など、事業形態とは別に積み上げるべき信頼もあります。
参考:法務省「株式会社の設立手続」、「合同会社の設立手続」。税負担の比較は、利益・役員報酬・家族の状況等も踏まえ、税理士等に個別確認してください。
社会保険・労働保険は、立場と雇用状況で分ける
ここでいう社会保険は、主に事業所で加入する健康保険・厚生年金保険を指します。個人事業主だから、公的な医療保険や年金の手続きが一切不要になるわけではありません。
個人事業主が一人で始める場合
個人事業主本人は、通常、自分の個人事業所に使用される従業員として健康保険・厚生年金保険に加入する立場ではありません。国民健康保険・国民年金等について、年齢や他の加入状況に応じた手続きと負担を確認します。
労働者を雇わず事業主だけで行う場合と、従業員を雇う場合も区別します。事業主本人の労災保障については、通常の労働者としての加入とは別に、特別加入等の確認が必要になることがあります。
個人事業主が従業員を雇う場合
個人でも法人でも、労働者を雇えば、原則として労働保険の手続きが必要です。労災保険と雇用保険は同じ制度ではなく、雇用保険は働き方等による加入条件も確認します。
健康保険・厚生年金保険は、個人の旅客運送事業所で常時5人以上の従業員を使用する場合、強制適用の対象になります。5人未満でも任意適用の制度があるため、単に「個人なら社会保険は不要」とまとめないことが大切です。
法人で開業する場合
法人の事業所は、被保険者となるべき人を使用する場合、社会保険の加入手続きが必要です。代表者だけの会社も対象となり得るため、「従業員を雇っていないから不要」とは判断できません。役員報酬や勤務実態等も含めて確認します。
一方、法人の役員は、原則として労働保険の対象となる労働者とは扱いが異なります。役員か従業員か、同居親族かなども含めて、適用を整理しましょう。
出典:日本年金機構「適用事業所と被保険者」、e-Gov「厚生年金保険法」(第6条)、「個人事業主と家族の被保険者の取扱い」、厚生労働省「労働保険の適用・徴収」
加入手続きの詳しい整理は、介護タクシーと社会保険・労働保険をご覧ください。
法人化と「介護保険が使えること」は別の話です
介護タクシーの運送事業の許可と、訪問介護等の事業者指定は別の手続きです。会社を作ったことや、運転者が介護資格を持っていることだけで、介護保険を請求できるわけではありません。
指定訪問介護事業者としてサービスを行う場合は、原則として法人格を備えたうえで、人員・設備・運営等の指定基準も満たす必要があります。例えば、神戸市の条例は指定の対象となる者を法人と定めています。具体的な取扱いや例外は、予定するサービスの指定権者に確認してください。
また、通院等乗降介助の対象となる介助と、移送に係る経費である運賃は区別します。厚生労働省の資料でも、運賃は介護保険の対象ではないと示されています。サービスの指定だけでなく、利用者ごとの計画や実際の介助内容等の算定条件も確認が必要です。
なお、障害福祉サービスの「居宅介護」は介護保険の「訪問介護」とは別の制度です。両者を一括して「介護保険が適用される」と説明することはできません。
出典:神戸市・指定居宅サービス事業者の指定等の基準条例(第2条/PDF)、厚生労働省・訪問介護の概要(通院等乗降介助、資料46ページ/PDF)。制度の違いは介護保険タクシーの解説も参考にしてください。
今の開業規模と、将来の事業計画を合わせて選ぶ

自分を中心に小さく始めたい場合
当面は自分が中心となって運転し、会社設立の負担をかけずに始めたいなら、個人事業主としての計画が一つの選択肢です。ただし、休業時の対応、予約が重なった場合の対応、生活費を含めた資金繰りも考えておきましょう。
共同経営や介護事業への展開も具体的に考えている場合
複数人で経営する、既存法人の事業として始める、訪問介護等の指定も予定するなら、法人としての準備を比較検討します。将来の構想だけでなく、開業当初から負担できる管理費用と必要な人員があるかも確認してください。
個人事業主でも雇用や増車の計画は可能です。「台数を増やすなら必ず法人」という単純な分け方ではなく、契約・資金・運営体制から判断します。
後から法人化する場合は、許可の承継手続きを先に確認する
個人で許可を受けた後に会社を設立しても、個人の許可が自動的に新法人へ移るわけではありません。法人成りでは事業の譲渡譲受の認可等、許可を引き継ぐための手続きを事前に確認する必要があります。
施設・車両の契約名義、保険、取引先との契約、雇用関係、運賃や営業開始の予定も整理します。会社の設立日だけを先に決めず、管轄の運輸支局に相談し、必要な手続きと順序を確認しましょう。
出典:関東運輸局「タクシー事業を始めるには」(譲渡譲受の認可等)、四国運輸局「介護タクシー関係」(法人成りを含む譲渡譲受)
開業形態を決める前の4つの確認
- 行うサービスを決める
福祉輸送限定の運送事業だけか、訪問介護等の指定も予定するかを整理します。 - 事業の主体と働く人を決める
個人本人か法人か、運転する人や雇用する人、必要な資格・勤務体制を確認します。 - 初期費用と継続費用を比較する
設立費用だけでなく、保険料、会計・事務、生活費、車両等の返済を含む資金繰りを検討します。 - 申請名義と契約・資金の整合を確認する
車両や施設を契約する前に、申請者名義と使用権原、自己資金の証明、将来の法人化の予定を照合します。
個人と法人のどちらかが一律に正解なのではありません。現在の人員・資金で無理なく運営でき、予定するサービスと将来の変更手続きにも対応できる形を選ぶことが大切です。
制度・資料の確認日:2026年10月20日。実際の申請では、申請先の最新の基準や手引きを確認してください。
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介護タクシーの許可申請サポート
〜最寄りの頼れる専門家〜
介護タクシーの許可申請は、行政書士法人MOYORICへ
- 申請書類の作成から、運輸局との打ち合わせ・申請まで代行します
- お申し込みから開業までの期間のご相談は、報酬に含まれます
- 対応地域:東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県/大阪府・兵庫県・京都府・奈良県(一部地域を除く)
登録免許税3万円と実費は別途かかります。営業所が兼用住宅の場合は、別途お見積りします。
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