介護タクシーでは、自賠責保険に加えて、国土交通省の告示で定める基準を満たす任意保険(対人8,000万円以上、対物200万円以上、対物の免責額30万円以下)への加入が許可の要件です。さらに、車外での介助中の事故などに備えて、賠償責任保険への加入も検討しましょう。
この記事では、介護タクシーに必要な保険と、自動車保険ではカバーしきれないリスクへの備え方を整理します。
介護タクシーの保険の考え方
- 自賠責保険:法律ですべての自動車に加入が義務づけられています
- 任意保険:告示の基準を満たす保険に、すべての事業用自動車が加入します(許可の要件)
- 賠償責任保険:車外での介助中の事故などに備える保険です(任意)
介護タクシーは、任意保険への加入が許可の要件です
自家用車の場合、任意保険への加入は強制ではありません。しかし、介護タクシーでは、旅客自動車運送事業運輸規則と国土交通省の告示(平成17年国土交通省告示第503号)により、一定の基準を満たす任意保険(または共済)への加入が求められています。基準の主な内容は、次のとおりです。
- 対人賠償:1人につき8,000万円以上
- 対物賠償:1事故につき200万円以上(免責額は30万円以下)
- 保険期間中の支払額に制限がないこと
- すべての事業用自動車が加入すること
許可申請の段階では、計画している車両のすべてが基準を満たす任意保険に加入する計画であること(見積書など)を示します。実際の加入は運輸開始までに行い、運輸開始届には保険証券の写しを添付します。加入しなければ、開業することはできません。実務上は、対人・対物とも「無制限」で加入することが多いです。
自賠責保険と任意保険の違い
自賠責保険は、交通事故の被害者を救済するための保険で、事故の相手方や乗車中の利用者など、他人の人身の損害に対して支払われます。そのため、自分自身のけがや、車や物が壊れた場合の補償は、自賠責保険では受けられません。
一方、任意保険は、対人賠償の上乗せや、対物賠償、運転者や同乗者のけがの補償、車両の補償など、自賠責保険では対象にならない補償をカバーします。自賠責保険とあわせて任意保険に加入しておくことで、万一事故を起こした場合の事業者の経済的な負担を軽くできます。
車外での介助中の事故に備える賠償責任保険
介護タクシーでは、単に利用者を運ぶだけでなく、車いすやストレッチャーでの乗り降りを手伝うなど、身体的な介助を伴うことが多くあります。
自動車保険は、自動車の運行による事故を対象とするものです。そのため、車両を降りた後の介助中に起きた事故などは、自動車保険の補償の対象外となる可能性があります。例えば、次のようなケースです。
- 介助中に利用者を転倒させ、けがをさせてしまった場合
- 車いすがぶつかり、建物や物を壊してしまった場合
- 利用者の車いすを誤って倒し、壊してしまった場合
こうしたリスクに備えるのが、自動車事故以外の損害を補償する賠償責任保険です。保険会社によって名称はさまざまで、施設所有(管理)者賠償責任保険などの形で提供されています。個人事業主向け・企業向けなど種類があり、補償内容や保険料も異なります。
なお、リフトの操作中の事故など、どこまでが自動車保険の対象になるかは、保険の約款や特約によって異なります。加入している保険の補償範囲を、保険会社に確認しておきましょう。
保険は、事業の内容に合わせて組み合わせましょう
賠償責任保険は任意加入ですので、補償内容と費用を比べて加入を検討するとよいでしょう。まずは任意保険に加入する保険会社や保険代理店に、介護タクシー事業向けの保険を相談することをおすすめします。
介護タクシー事業では、自動車事故だけでなく、日常の介助中の事故や損害への備えも求められます。自賠責保険と任意保険を基本に、介助中の事故をカバーする賠償責任保険を組み合わせて、安心して事業を続けられる体制を整えましょう。
開業までに必要な準備は「介護タクシー開業の流れと準備」、保険などのリスク対策は「介護タクシーの保険とリスク管理」で解説しています。
出典:旅客自動車運送事業運輸規則(e-Gov法令検索)、関東運輸局「法人タクシー事業の許可申請の審査基準」(PDF)、近畿運輸局 福祉輸送事業の審査基準(PDF)
制度・資料の確認日:2026年11月2日。
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