
車いすへの移乗を手伝ったり、降車後に病院の受付まで付き添ったりといった介助は、移動そのものとは別のサービスです。こうした介助に対する料金や、車いす・ストレッチャーなどの機材を使ったときの料金は、運賃とは異なる扱いになっています。
この記事では、介助料や機材使用料がどのような位置づけの料金なのか、いくらに設定できるのか、そして実務で気をつけたい点を確認します。
介護タクシーの料金は大きく3つの層に分かれる
介護タクシーで利用者からいただく料金は、性質によって扱いが分かれます。おおむね次の3つの層に分けて考えると理解しやすくなります。
| 料金の区分 | 主な内容 | 手続きの考え方 |
|---|---|---|
| 運賃 | 距離制運賃、時間制運賃など、移動そのものの対価 | 運輸局の認可を受けて設定します。 |
| 付随料金 | 迎車回送料金、待料金など | 料金の種類や地域の運用に応じて、認可または届出が必要となるのが原則です。 |
| 介助料・機材使用料 | 移乗介助、屋内介助、院内付き添い、車いす・ストレッチャー等の使用料など | 運送に直接伴わない料金として、認可も届出も不要とされています。 |
第1の層は、移動そのものの対価である「運賃」です。距離制運賃や時間制運賃がこれにあたり、運輸局の認可を受けて初めて適用できます。料金表に定めた範囲を超えて自由に決められるものではありません。
第2の層は、迎車回送料金や待料金など、運賃に付随する料金です。これらは料金の種類や地域の運用に応じて、認可または届出という形で、運輸局への手続を経て設定するのが原則です。
そして第3の層が、本記事のテーマである介助料や機材使用料です。これらは「運送に直接伴わない料金」と位置づけられ、認可も届出も不要とされています。事業者が自ら定めて収受できる料金です。
介助料・機材使用料に認可も届出もいらない理由
介助料や機材使用料に運輸局の手続が要らないのは、これらが「移動の対価」ではなく、移動に付随して提供される介助やサービスの対価だからです。
この考え方は、国土交通省の通達で早くから示されてきました。運賃・料金の制度を定めた通達では、介護料金など旅客の運送に直接伴わない料金は、当然に運賃・料金には含まれず、認可も届出も不要であるとされています。
さらに、福祉輸送サービスの運賃の枠組みを定めた平成18年の通達(国自旅第170号)でも、ケア運賃に関して、輸送の実績に応じた弾力的な取扱いを認めたうえで、運送に直接伴わない料金については認可も届出も不要とすることが明記されています。
「乗降に係る料金」と「介助料」の関係
ここで一つ、誤解されやすい論点があります。「乗降に係る料金」、つまりスロープやリフトで車両に乗り降りする行為そのものへの料金の扱いです。
一般のタクシー(ユニバーサルデザインタクシーなど)の場合、乗降に係る料金は原則として認められていません。乗り降りは誰もが必要とする行為で運送と密接不可分であり、車いす利用者など特定の旅客にだけ追加負担を求めると、不当な差別的取扱いにあたるおそれがあるためです。この点は、令和4年3月31日付けの事務連絡「タクシーの乗降に係る料金の設定について」で改めて確認されています。
一方で、同じ事務連絡では、福祉輸送事業に限定して許可を受けた事業者、いわゆる介護タクシーや、事業計画上で福祉輸送サービスのみに使う車両として届け出た車両については、扱いが異なるとされています。
これらの事業者は、セダン型を含めて車両の種類を問わず、認可等の特段の手続なく乗降に係る料金を設定できる、とされています。
さらに、乗車前後の移乗の介助や、降車後に病院まで付き添う行為、看護師やヘルパーの付き添い、医療機器の使用などは、「運送に直接伴わない料金」として収受でき、手続は不要とされています。この事務連絡には一問一答も付されており、福祉限定事業者であれば車両の種類を問わず介助に関わる料金を収受できることが、具体例とともに示されています。
介護タクシーを開業する立場で要点をまとめると、介助に関わる料金は、基本的に運輸局の手続なしに自社で設定できると理解しておけばよいでしょう。
では、いくらに設定できるのか
ここが最も気になる点だと思います。結論から言える性質のものではないので、順を追って確認します。
法令や通達には、介助料・機材使用料の上限額を定めた規定はありません。前述のとおり「弾力的な取扱い」とされており、運賃のように上限が公示されているわけでもないため、金額は事業者が決められます。
ただし、自由に決められることと、いくらでも構わないことは同じではありません。
通達では、提供するサービスの内容に照らして著しく低額で名目的なものにすぎないと認められる場合などは別に扱う、という趣旨も示されています。これは裏を返せば、サービスの実態と懸け離れた料金設定、たとえば運賃の認可規制を避けるために移動の対価を介助料に付け替えるような設定は、適切とはいえないということです。
設定額を考えるときの3つの視点
実際に金額を決めるときは、次のような視点で考えると確認しやすくなります。
| 視点 | 考え方 |
|---|---|
| サービスの実態 | どのような介助を、どの程度の手間と時間をかけて行うのかを基準にします。 |
| 原価 | 介助にかかる人件費や時間、機材の購入・維持にかかる費用などを踏まえて検討します。 |
| 地域性・利用者の負担感 | 同じ地域の事業者の水準や、利用者が継続して利用できる金額かどうかも現実的な判断材料になります。 |
実務上の目安
「相場はいくらか」という問いには、率直にお答えすると、公的に集計された統計や、一律の相場は存在しません。そのため、特定の金額を目安として示すことは控えます。
実務上は、介助の内容ごとに定額で設定する例や、時間単位で設定する例などがあります。乗降介助、移乗介助、屋内介助、院内付き添いなど、サービス内容に応じて料金を分けている事業者もあります。
金額を決める際は、サービス内容、所要時間、人件費、地域性、利用者の負担感を踏まえて、自社の実態に合った料金表を作成することが大切です。
機材使用料についても、車いすやストレッチャー、酸素吸入器などの貸与・使用に応じて、定額で設定している例が見られます。
いずれの場合も大切なのは、料金表を整え、利用者に事前にわかりやすく説明することです。これがトラブルの予防にもつながります。
介助料と「介護保険の乗降介助」は別物
ここで一点、混同を避けたい区別があります。認可も届出も不要な介助料は、原則として利用者の全額自費でいただく料金です。
これに対して、訪問介護事業所などの指定を受けた事業者が、ケアプランに基づいて行う「通院等乗降介助」は、介護保険の給付対象となるサービスです。
同じ「乗降介助」という言葉が使われていても、介護保険上の通院等乗降介助は、指定訪問介護事業所等として、ケアプランに位置づけられたサービスを提供する場合の制度上の取扱いです。介護タクシー事業者が任意に設定する自費の介助料とは、根拠となる制度も、請求の考え方も異なります。
この点は論点が多いため、別の記事で改めて確認します。
トラブルを防ぐための実務ポイント
介助料・機材使用料は手続なしに設定できる分、利用者との認識のずれが起きやすい料金でもあります。次の点を押さえておくと安心です。
- 料金表を作成し、事前に提示する運賃・付随料金・介助料・機材使用料を分けて記載した料金表を作り、営業所への掲示や予約時の案内で、あらかじめ提示しておきます。利用者が料金の内訳を理解したうえで予約できる状態にしておくことが大切です。
- 領収書で内訳を分けて記載する運賃と介助料を区別して示しておくと、後からの説明もしやすく、経理処理もしやすくなります。
- 判断に迷うケースは管轄へ確認するある行為への料金が「運送に直接伴わない料金」にあたるかどうかは、行為の様態によって個別に判断されます。不明な場合は、管轄の運輸支局や国土交通省に照会するのが確実です。
まとめ
介助料や機材使用料は、移動の対価である運賃とは切り離され、運送に直接伴わない料金として、認可も届出もなしに事業者自身が設定できる料金です。
福祉輸送に限定して許可を受けた介護タクシーであれば、車両の種類を問わず、乗降や介助に関わる料金を収受できるとされています。
金額に法令上の上限はありませんが、提供する介助の実態に見合った、合理的に説明できる額であることが前提です。
介助料や機材使用料は、事業者が自ら設計できる料金だからこそ、サービス内容に見合った合理的な金額を設定し、丁寧に説明できる体制を整えておきましょう。
開業前の段階で、運賃認可の内容や利用者に提示する料金表の考え方を確認しておくことが大切です。
- 運賃と介助料・機材使用料の違いを確認したい
- 距離制運賃・時間制運賃・迎車回送料金の考え方を確認したい
- 介護タクシー開業時に必要な運賃認可申請を相談したい
- 許可申請から運賃認可、運輸開始届までまとめて確認したい






