
介護タクシーは、許可を取得して車両を準備すれば、すぐに利用者が集まる事業ではありません。
開業直後は、まだ地域の人に名前を知られていません。病院、介護施設、ケアマネジャー、利用者家族にも、「この地域に新しく介護タクシーができた」という情報が届いていない状態です。
そのため、介護タクシー開業後に最初の利用者を獲得するには、地域の関係者に知ってもらい、必要なときに思い出してもらえる状態を作ることが大切です。
この記事では、介護タクシー開業初期に行うべき営業方法、最初の利用者を獲得するための考え方、営業時の注意点をわかりやすく解説します。
介護タクシー開業初期の営業で大切な考え方
介護タクシーの営業というと、「病院や施設にチラシを配ればよい」と考える人もいるかもしれません。
もちろん、チラシや名刺を配ることも大切です。
しかし、開業初期に本当に重要なのは、単に宣伝することではありません。
「この人になら、安心して利用者を紹介できそうだ」と思ってもらうことです。
介護タクシーの主な利用者は、要介護・要支援の認定を受けている人、身体障害者手帳をお持ちの人、その他障害等により一人での移動や公共交通機関の利用が難しい人などです。
そのため、紹介する側であるケアマネジャー、医療ソーシャルワーカー、施設職員、ご家族は、料金だけでなく、対応の丁寧さ、安全性、時間の正確さ、連絡の取りやすさを重視します。
開業初期の営業では、次の3つを意識しましょう。
- まずは地域の関係者に知ってもらう
- 紹介しやすい情報を分かりやすく伝える
- 一度の利用を次の利用・紹介につなげる
最初の利用者はどこから来るのか
介護タクシーの最初の利用者は、いきなりホームページだけで大量に集まるとは限りません。
開業初期は、地域の関係者からの紹介、家族からの問い合わせ、病院・施設への営業、Google検索など、複数の経路から少しずつ問い合わせが入る形が一般的です。
主な利用者獲得ルートは、次のとおりです。
| 営業先・集客経路 | 期待できる問い合わせ |
|---|---|
| 居宅介護支援事業所 | 通院、退院、施設入所、ショートステイ送迎などの相談 |
| 病院・医療ソーシャルワーカー | 退院時の移動、転院、通院の移動相談 |
| 介護施設・障害者施設 | 通院送迎、外出支援、入退所時の移動相談 |
| 地域包括支援センター | 地域の高齢者や家族からの移動相談 |
| ホームページ・Google検索 | 利用者家族からの直接問い合わせ |
| チラシ・名刺 | 地域関係者や家族が必要時に連絡しやすくなる |
大切なのは、どれか一つだけに頼らないことです。
介護タクシーは地域密着型の事業ですので、対面営業、紙の案内、ホームページ、Googleマップ対策を組み合わせることが効果的です。
営業前に、自分の経験や強みを整理しておく
開業初期の営業では、チラシや料金表を配るだけでなく、「なぜこの人に依頼すると安心なのか」を相手に伝えることが大切です。
介護タクシーを開業する人の背景はさまざまです。
たとえば、これまでの相談事例を見ても、障害のあるご家族の移動に悩んだ経験がある人、消防関係の仕事に携わっていた人、介護タクシー事業者で勤務していた人、介護事業所で介護福祉士として働いていた人、自動車関係の仕事に携わっていた人など、いろいろな経歴があります。
こうした経験は、開業初期の営業でも大きな強みになります。
| これまでの経験 | 営業時に伝えやすい強み |
|---|---|
| 障害のあるご家族の移動に悩んだ経験がある | 利用者家族の不安や、移動の大変さを理解しやすい |
| 消防関係の仕事に携わっていた | 安全確認、緊急時対応、時間管理への意識を伝えやすい |
| 介護タクシー事業者で勤務していた | 現場の流れ、予約対応、乗降介助、利用者対応の経験を伝えやすい |
| 介護事業所で介護福祉士として働いていた | 高齢者・障害のある人への接し方や、介助経験を伝えやすい |
| 自動車関係の仕事に携わっていた | 車両管理、点検、車両選び、安全運転への意識を伝えやすい |
もちろん、経歴だけで利用者が集まるわけではありません。
しかし、ケアマネジャーや病院、施設の担当者は、「この人はどのような思いで介護タクシーを始めたのか」「安心して利用者を任せられる人なのか」を見ています。
たとえば、家族の移動で悩んだ経験がある人であれば、利用者家族の不安に寄り添いやすいという強みがあります。
介護現場で働いていた人であれば、利用者との接し方や介助時の注意点を理解していることが強みになります。
自動車関係の仕事をしていた人であれば、車両管理や点検、安全運転への意識を伝えやすくなります。
営業では、自分を大きく見せる必要はありません。
自分の経験や強みを、相手に伝わる言葉にしておくことが大切です。
営業方法① 居宅介護支援事業所に挨拶する
介護タクシー開業初期に、まず営業先として考えたいのが居宅介護支援事業所です。
居宅介護支援事業所には、ケアマネジャーが在籍しています。
ケアマネジャーは、要介護者の生活全体を見ながら、通院、退院、施設利用、外出などの相談を受けることがあります。
そのため、地域の介護タクシー事業者を把握しておきたいと考えるケアマネジャーも少なくありません。
営業時には、単に「介護タクシーを始めました」と伝えるだけでなく、次の情報を分かりやすく伝えましょう。
- 営業エリア
- 対応できる曜日・時間帯
- 車いす対応の可否
- ストレッチャー対応の可否
- 付き添い・介助対応の範囲
- 通院・退院・施設入所などの対応例
- 予約方法・連絡先
- 料金の目安
ケアマネジャーは忙しいため、長時間の営業トークは逆効果になることがあります。
短時間で要点を伝え、必要なときに見返せる資料を渡すことを意識しましょう。
営業方法② 病院・医療ソーシャルワーカーに情報提供する
病院では、対象となる利用者の退院や転院の場面で、移動手段が必要になることがあります。
特に、車いすのまま移動したい人、家族の車では対応が難しい人、公共交通機関の利用が難しい人にとって、介護タクシーは重要な選択肢になります。
なお、退院や転院に関する移動については、利用者の状態や必要な対応によって、介護タクシーだけで対応できる場合と、別の体制が必要になる場合があります。営業時には、対応できる範囲を正確に伝えることが大切です。
病院への営業では、医療ソーシャルワーカー、地域連携室、退院支援に関わる部署に情報提供する方法があります。
ただし、病院は非常に忙しい場所です。
突然長時間の説明をするのではなく、次のような姿勢が大切です。
- 短時間で挨拶する
- 必要な情報をまとめた資料を渡す
- 緊急時・退院時の連絡方法を明確にする
- 車いす対応など、対応可能な内容を具体的に伝える
- 無理な紹介依頼や過度な営業をしない
紹介料や謝礼を前提にした営業は避けるべきです。
介護タクシーの営業では、信頼関係が重要です。利用者の安全と利便性を第一に考え、地域の移動手段として誠実に情報提供する姿勢が大切です。
営業方法③ 介護施設・障害者施設に案内する
介護施設や障害者施設でも、通院、入退所、外出、帰省などの場面で移動手段が必要になることがあります。
特に、施設職員が送迎対応に困っている場合や、家族が送迎できない場合には、介護タクシーが役立つことがあります。
営業先としては、次のような施設が考えられます。
- 有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- グループホーム
- 障害者支援施設
- 就労支援事業所
施設に営業する際は、「何でも対応できます」と言うよりも、対応できる内容を具体的に伝える方が信頼されやすくなります。
たとえば、次のような伝え方です。
- 車いすのまま乗車できます
- 通院や退院時の送迎に対応しています
- 事前予約制で対応しています
- ご家族からの直接予約にも対応しています
- 料金は事前に目安をご案内します
施設側は、利用者本人や家族に説明しやすい事業者を選びやすくなります。
そのため、料金表、対応エリア、予約方法を分かりやすくまとめた資料を用意しておくことが重要です。
営業方法④ 地域包括支援センターに情報提供する
地域包括支援センターは、高齢者やその家族からさまざまな相談を受ける地域の相談窓口です。
介護タクシーの直接的な紹介窓口ではありませんが、地域の移動手段の一つとして知ってもらう価値があります。
地域包括支援センターに案内する際も、営業色を強く出しすぎる必要はありません。
「地域で利用できる介護タクシーの情報提供」として、営業エリア、対応内容、予約方法、料金の目安をまとめた資料を持参するとよいでしょう。
地域包括支援センターでは、利用者本人だけでなく、ご家族からの相談もあります。
家族が見ても分かる資料を用意しておくことが、問い合わせにつながるきっかけになります。
営業方法⑤ チラシ・名刺・料金表を用意する
開業初期の営業では、チラシ、名刺、料金表が重要です。
口頭で説明しても、相手が後から思い出せなければ問い合わせにはつながりません。
介護タクシーの案内資料には、少なくとも次の情報を入れておきましょう。
- 事業者名
- 営業エリア
- 予約受付時間
- 電話番号
- ホームページURL
- 対応できる車両・設備
- 主な利用場面
- 料金の目安
- キャンセル時の取扱い
特に、利用者家族は料金を気にすることが多いため、料金の考え方を分かりやすく示すことが大切です。
ただし、実際の料金は利用距離、時間、介助内容、迎車回送料金などによって変わることがあります。
料金表では、誤解を招かないように「目安」と「正式な見積り」の関係を明確にしておきましょう。
営業方法⑥ ホームページを整える
介護タクシーを探している利用者家族は、スマートフォンで検索することが多くあります。
そのため、開業初期からホームページを整えておくことは重要です。
ホームページには、次のような情報を掲載しておきましょう。
- 対応エリア
- 予約方法
- 電話受付時間
- 料金表
- 車両写真
- 車いす対応の可否
- 利用できる場面
- 運転者・事業者の紹介
- よくある質問
介護タクシーは、利用者や家族にとって不安の大きいサービスです。
「どんな人が来るのか」「車いすのまま乗れるのか」「病院までいくらくらいかかるのか」が分からないと、問い合わせをためらってしまいます。
ホームページでは、利用前の不安を一つずつ解消することを意識しましょう。
営業方法⑦ Googleマップ対策を行う
地域で介護タクシーを探す人は、Google検索やGoogleマップで「介護タクシー 地域名」と検索することがあります。
そのため、Googleビジネスプロフィールを整えることも重要です。
開業初期には、次の項目を確認しておきましょう。
- 事業者名
- 電話番号
- 営業時間
- 対応エリア
- サービス内容
- 車両写真
- ホームページURL
- 予約方法
情報が古い、電話番号が分かりにくい、営業時間が未設定といった状態では、せっかく検索されても問い合わせにつながりにくくなります。
また、実際に利用していただいた後は、利用者や家族からの評価が集客に影響することもあります。
ただし、口コミを無理に依頼したり、不自然に評価を集めたりするのは避けるべきです。
正確な情報を掲載し、実際の対応品質を高めることが、長期的な集客につながります。
営業方法⑧ 最初の利用を次の利用につなげる
介護タクシーの開業初期では、最初の1件を獲得することも大切ですが、その1件を次につなげることがさらに重要です。
一度利用した人が満足すれば、次回の通院、退院、施設入所、家族からの紹介につながる可能性があります。
最初の利用では、次の点を特に意識しましょう。
- 予約時の説明を丁寧に行う
- 料金の目安を事前に伝える
- 時間に余裕を持って到着する
- 乗降時の安全確認を丁寧に行う
- 利用後に次回予約の可能性を確認する
- 名刺や案内資料を渡す
また、ケアマネジャーや施設職員から相談を受けた場合は、対応後に簡単なお礼や対応完了の連絡をしておくと、次回以降も安心して相談してもらいやすくなります。
もっとも、紹介料や謝礼を前提とした営業は避けるべきです。お礼の連絡は、あくまで通常の挨拶や対応報告として行い、金品の提供や過度な営業にならないよう注意しましょう。
介護タクシーは、単発利用だけでなく、通院などで継続利用につながることがあります。
一度の利用を「次もお願いしたい」と思ってもらえる対応にすることが、開業初期の集客では非常に重要です。
開業初期に営業するときの注意点
介護タクシーの営業では、積極的に動くことが大切です。
ただし、営業方法を誤ると、かえって信頼を失うことがあります。
開業初期には、次の点に注意しましょう。
- 強引な紹介依頼をしない
- 紹介料や謝礼を前提にした営業をしない
- 許可・認可された内容と異なる料金案内をしない
- 対応できないことを「できます」と言わない
- 医療・介護関係者の業務時間を長く奪わない
- 個人情報の取扱いに注意する
特に、料金や対応範囲については注意が必要です。
介護タクシーでは、運賃・料金、営業区域、利用者の範囲などについて、許可・認可内容に沿った運営が求められます。
特に、利用者の状態によっては、通常の介護タクシーではなく、医療的な管理体制を備えた搬送手段が必要になる場合もあります。
営業のために実際には対応できないことを約束してしまうと、後からトラブルになる可能性があります。
営業では、良く見せることよりも、正確に伝えることが大切です。
開業初期の営業で準備しておきたいもの
開業初期に営業を始める前に、次のものを準備しておくとスムーズです。
| 準備物 | 内容 |
|---|---|
| 名刺 | 事業者名、氏名、電話番号、ホームページURLなどを記載 |
| チラシ | 対応エリア、利用場面、車両設備、予約方法を掲載 |
| 料金表 | 運賃・料金の目安、加算される料金、見積り方法を掲載 |
| 営業先リスト | 居宅介護支援事業所、病院、施設、地域包括支援センターなど |
| ホームページ | 検索した人が問い合わせしやすい情報を掲載 |
| Googleビジネスプロフィール | 地域検索・Googleマップからの問い合わせに備える |
| 電話対応メモ | 予約時に確認すべき項目をまとめる |
営業で大切なのは、相手が必要なときにすぐ連絡できる状態を作ることです。
そのため、資料には必ず電話番号、受付時間、対応エリアを分かりやすく記載しておきましょう。
最初の利用者を獲得するための行動手順
開業直後に何から始めればよいか迷う場合は、次の順番で進めるとよいでしょう。
- 営業エリア内の居宅介護支援事業所、病院、施設をリストアップする
- 名刺、チラシ、料金表を準備する
- ホームページとGoogleビジネスプロフィールを整える
- まずは近隣の関係先に短時間で挨拶する
- 営業先ごとの反応や問い合わせ内容を記録する
- 問い合わせ内容をもとに、チラシやホームページを改善する
- 最初の利用者に丁寧に対応し、次回利用・紹介につなげる
開業初期は、営業してもすぐに問い合わせが来ないこともあります。
しかし、介護タクシーは必要になったときに思い出してもらう事業です。
一度挨拶した営業先にも、しつこくならない範囲で、定期的に情報提供を続けることが大切です。
まとめ:最初の利用者獲得は「信頼される準備」から始まる
介護タクシー開業後、最初の利用者を獲得するには、地域の関係者に知ってもらうことが重要です。
居宅介護支援事業所、病院、介護施設、地域包括支援センターなどに対して、営業エリア、対応内容、料金の目安、予約方法を分かりやすく伝えましょう。
また、自分の経験や強みを整理しておくことで、営業先にも「どのような思いで介護タクシーを始めたのか」「どのような点に安心して任せられるのか」が伝わりやすくなります。
ホームページやGoogleマップを整えることで、利用者家族からの問い合わせにもつながりやすくなります。
ただし、介護タクシーの営業では、強引な紹介依頼や、実際に対応できない内容の案内は避けるべきです。
開業初期の営業で大切なのは、「この事業者なら安心して任せられる」と思ってもらうことです。
一件一件の対応を丁寧に行い、最初の利用を次の利用や紹介につなげていきましょう。
介護タクシーは、許可を取得して終わりではありません。
営業所・車庫・車両・資金計画・運賃認可申請・許可後の手続きなど、開業前から確認しておくべき事項が多くあります。
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