介護タクシーの営業とケアマネ
介護タクシーを開業したのに、思うように依頼が入らない。
ホームページを作っても、チラシをまいても、電話が鳴らない。開業直後の事業者から、最もよく聞くお悩みです。

このようなとき、まず取り組んでいただきたいのが「ケアマネジャーへの営業」です。介護タクシーの集客には複数のルートがありますが、その出発点となり、かつ継続的な依頼につながりやすいのが、居宅介護支援事業所への訪問だからです。

この記事では、なぜケアマネ営業が集客の起点になるのかを整理したうえで、営業先の優先順位、居宅介護支援事業所への訪問の進め方、渡す資料の作り方、そして「断られても続ける」ための考え方まで、実務に沿って解説します。


なぜ介護タクシーの集客はケアマネ営業が起点になるのか

介護タクシーを「選ぶ」のは誰か

介護タクシーを実際に利用するのは、ご高齢の方や体の不自由な方です。しかし、「どの事業者にお願いするか」を決めているのは、必ずしも利用者本人とは限りません。

多くの場合、その判断にはご家族や、介護の専門職が関わっています。とりわけ、要介護の方の生活を日常的に支えているケアマネジャーは、利用者・家族から「移動で困っている」という相談を最初に受け取りやすい立場にあります。

つまり、利用者と事業者をつなぐ「入口」に近いところにいるのがケアマネジャーです。ここに知っていただくことが、依頼への近道になります。

ケアマネジャーと居宅介護支援事業所の役割

ケアマネジャー(介護支援専門員)は、要介護認定を受けた方のケアプラン(居宅サービス計画)を作成し、必要なサービスを調整する専門職です。その多くが、居宅介護支援事業所に所属しています。

ケアマネジャーは、利用者の生活全体を見ながら、訪問介護やデイサービスなど、さまざまなサービスを組み合わせていきます。通院や外出の手段に困っている利用者がいれば、移動を支える選択肢として介護タクシーが話題に上ることがあります。

ここで大切なのは、ケアマネジャーは特定の事業者だけを抱えているわけではない、という点です。複数の事業者と日常的に関わっており、必要に応じて利用者に情報を伝えます。だからこそ、「いざというときに思い出してもらえる存在」になっておくことが重要になります。

通院等乗降介助との関係も押さえておく

介護保険を使った「通院等乗降介助」を行う場合は、介護保険タクシー(介護保険の指定)に関する手続きや要件が関わってきます。ケアマネジャーは介護保険サービスの調整役でもあるため、自社が介護保険に対応しているかどうかは、紹介のしやすさに影響します。

通院等乗降介助の詳しい内容は、こちらの記事で解説しています。


営業先の優先順位|居宅介護支援事業所だけではない

ケアマネ営業というと居宅介護支援事業所を思い浮かべますが、紹介につながる窓口はほかにもあります。地域の事情に合わせて、優先順位をつけて回りましょう。

営業先主な役割期待できること
居宅介護支援事業所要介護者のケアプラン作成・調整通院・外出の移動手段としての紹介
地域包括支援センター高齢者の総合相談・要支援者の支援地域の相談窓口からの紹介
病院(地域連携室・MSW)退院支援・転院調整退院時・通院時の移動依頼
訪問介護事業所在宅での介護サービス提供利用者の外出ニーズの紹介
障害福祉の相談支援事業所障害のある方の支援計画作成障害のある利用者の移動依頼
同業の介護タクシー事業者同じ移送サービス対応しきれない依頼の融通

① 居宅介護支援事業所(最優先)

まずはここからです。要介護の利用者と日常的に接しているため、移動の相談が持ち込まれやすく、紹介の起点になります。

② 地域包括支援センター

高齢者の総合的な相談窓口です。要支援の方や、介護サービスを使い始める前の方の相談も多く集まります。地域の入口として、知っておいてもらう価値があります。

③ 病院の地域連携室・医療ソーシャルワーカー(MSW)

入院していた方が退院・転院する際、移動手段の調整を行うのが地域連携室や医療ソーシャルワーカーです。退院時や定期通院の移動は、介護タクシーの代表的な利用場面です。

④ 訪問介護事業所・障害福祉の相談支援事業所

訪問介護のヘルパーは、利用者の自宅に頻繁に出入りしており、外出の希望を把握しやすい立場にあります。また、介護タクシーの利用者は高齢の方だけではありません。障害のある方の移動も対象になるため、障害福祉の相談支援事業所も営業先になります。

⑤ 同業の介護タクシー事業者

見落とされがちですが、同業者も大切なつながりです。依頼が重なって対応しきれないとき、互いに仕事を融通し合える関係は、双方にとって助けになります。開業の挨拶をしておくとよいでしょう。


居宅介護支援事業所への訪問営業の進め方

営業の基本姿勢は、「売り込む」ことではなく「知ってもらい、信頼を積み重ねる」ことです。

順を追って説明します。

① 初回訪問は売り込まない

最初の訪問で契約や紹介を求めても、うまくいきません。ケアマネジャーは日々忙しく、初対面の事業者にすぐ利用者を紹介することはほとんどないからです。

初回は、名刺と簡単なパンフレットを渡し、「近くで介護タクシーを開業しました」と挨拶するだけで十分です。ここでの目的は、存在を知っていただくことに尽きます。

② 訪問の頻度と継続期間

一度の訪問で覚えてもらえることは稀です。大切なのは接触の回数です。

月に1回程度、短時間の挨拶を継続しましょう。すぐに結果が出なくても、半年、1年と顔を出し続けることで、少しずつ「あの介護タクシーの人」として認識されていきます。営業は短距離走ではなく、長距離走だと考えてください。

③ 2回目以降に伝えること

関係ができてきたら、自社の強みを少しずつ伝えます。たとえば、対応できる車両や設備、対応エリア、急な依頼への対応可否などです。

ケアマネジャーが利用者に説明しやすいように、具体的でわかりやすい情報を渡すことを心がけます。

④ ケアマネジャーの負担を減らす提案をする

ケアマネジャーは多くの業務を抱えています。だからこそ、「この事業者に頼むと手間が減る」と感じてもらえることが、選ばれる決め手になります。

たとえば、予約や連絡のやり取りがスムーズであること、依頼から手配までの流れが明確であることなどです。相手の負担を軽くする視点を持つと、関係が深まりやすくなります。


ケアマネに渡す営業資料に載せるべき情報

訪問の際に渡すパンフレットや案内は、その後もケアマネジャーの手元に残り、利用者への説明に使われます。次の情報を、見やすく整理して載せましょう。

  • 料金の目安:迎車料金・距離(または時間)の料金・介助料金など、利用者が費用をイメージできる情報
  • 対応エリア:対応している市区町村を明記する
  • 車両・設備:車いす対応、ストレッチャー対応など、対応できる内容を具体的に
  • 連絡先と予約の流れ:電話番号を大きく、予約の手順をわかりやすく
逆に、避けたいのは「情報を詰め込みすぎること」です。文字が多すぎる資料は、忙しいケアマネジャーには読まれません。要点を絞り、ひと目で何ができる事業者かが伝わるようにしましょう。

名刺やチラシの作り方は、こちらの記事も参考にしてください。


「断られる」のが普通|紹介につなげる継続のコツ

なぜ最初は紹介がもらえないのか

営業を始めると、「今は間に合っています」と言われることがほとんどです。これは、あなたのサービスが劣っているからではありません。

ケアマネジャーはすでに付き合いのある事業者を持っていることが多く、新しい事業者にすぐ切り替える理由がないだけです。断られるのは自然なことだと受け止めましょう。

思い出してもらえる事業者になる

付き合いのある事業者が対応できないとき、別の選択肢が必要になる場面は必ず訪れます。そのときに思い出してもらえるかどうかが勝負です。

そのためには、定期的な接触を絶やさないこと、そして一度依頼を受けたら丁寧で確実な対応を積み重ねることです。時間に正確であること、車内を清潔に保つこと、丁寧な介助を行うこと。当たり前のことを当たり前に続けることが、次の紹介を生みます。

FAXや郵送による情報提供の使いどころ

介護業界では、FAXでの情報連携が今も使われています。訪問の合間に、案内をFAXや郵送で届ける方法もあります。

ただし、送るだけで紹介が増えるわけではありません。あくまで訪問による関係づくりを補う手段と考え、「送りっぱなし」にしないことが大切です。


ケアマネ営業と並行して進めたいWeb集客

ケアマネ営業は集客の起点ですが、これだけに頼ると、紹介の数に波が出やすくなります。近年は、利用者のご家族がインターネットで介護タクシーを探すことも増えています。

ケアマネ営業で足元を固めながら、ホームページやWeb集客も並行して整えておくと、依頼が安定します。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。


まとめ

介護タクシーの集客は、ケアマネジャーへの営業から始めるのが王道です。最後に要点を振り返ります。

  • 介護タクシーを利用者に伝える「入口」に近いのがケアマネジャー
  • 営業先は居宅介護支援事業所を最優先に、地域包括支援センターや病院の地域連携室などにも広げる
  • 初回訪問は売り込まず、挨拶と資料の手渡しにとどめる
  • 月1回程度の訪問を継続し、接触回数で信頼を積み重ねる
  • 渡す資料は、料金・対応エリア・設備・連絡先を簡潔に
  • 断られるのは普通のこと。思い出してもらえる事業者を目指す
  • ケアマネ営業とWeb集客を組み合わせると、依頼が安定する
まずは、自社の対応エリア内にある居宅介護支援事業所をリストアップすることから始めてみてください。一歩ずつの積み重ねが、安定した経営につながります。