介護タクシーと株式会社
介護タクシーを開業するにあたって、個人事業主ではなく「法人」としてスタートを切る方も多いです。
特に将来的に訪問介護事業や居宅介護事業の指定を受けたい場合は、法人格が必須となりますので、初めから「法人」で介護タクシーの許可を受けようと考える人もいます。

今回は、株式会社を設立して介護タクシーを始める前に、最低限決めておくべき事項を確認しましょう。

会社の基本事項を決定する

発起人(出資者)を決める

株式会社を設立する方法には「発起設立」と「募集設立」の2種類がありますが、介護タクシーを少人数やご家族で開業されるのであれば、手続きがシンプルで迅速な「発起設立」を選びます。

発起設立「発起設立」は、会社設立時に発行する株式のすべてを、発起人(設立メンバー)だけで引き受ける(出資する)方法です。
募集設立一方で「募集設立」は、発起人以外にも広く出資者を募る方法ですが、手続きが非常に煩雑になるため、介護タクシーのような個人・小規模法人の立ち上げで採用されることはまずありません。
まずは、誰が発起人となりお金を出すのかを決めましょう。
介護タクシー事業では、ご自身一人で出資してオーナー社長になるケースが最も一般的です。

商号(会社名)を決める

会社名は自由に決めることができますが、以下のルールを守る必要があります。

(1)株式会社という文字を入れる

商号とする文字の最初または最後に、「株式会社」という文字を付けなければなりません。「株式会社ABC」、「ABC株式会社」のどちらでも問題ありません。

介護タクシー事業をメインにするのであれば、利用者様やケアマネジャー様に覚えてもらいやすいよう「ケアタクシー〇〇」「介護タクシー△△」といった文言を入れるとわかりやすいです。ただし、会社名とは別に事業所名(屋号)も使えますので、必ずしも会社名に「介護タクシー」を連想させる必要はありません。

(2)使用できる文字が決まっている

  • ひらがな
  • カタカナ
  • 漢字
  • ローマ字(大文字及び小文字)
  • 数字
  • 符号:コンマ「,」、ハイフン「-」、ピリオド「.」、中点「・」、アポストロフィー「’」、アンパサンド「&」

符号は、日本文字を含む字句を区切る際に使用できます。したがって、商号の先頭又は末尾に使用不可ですが、「.」(ピリオド)のみ商号の末尾に使用可能です。また、字句の間に空白(スペース)は使用できませんが、ローマ字で複数の単語の間を区切る場合は空白を使用することができます。

(3)似ている企業名や世界的に有名な企業の名前は避ける

「任天堂」「トヨタ」「ニッサン」など、有名な企業名は避けるましょう。商標権等の侵害になりますし、民事上の損害賠償訴訟リスクがあります。

また、近隣に似たような会社名や介護タクシーの事業所名がないように気をつけましょう。

事業目的を決める

会社が行う事業内容を決めます。会社設立後すぐに行う事業はもちろん、将来的に行う事業も含めて記載しておくと良いでしょう。

包括的な記載でも大丈夫ですので、あまり細かな表現にとらわれる必要はありません。

事業目的には、単に「介護タクシー業」と書くのではなく、将来の展望を見据えて以下のような表現を含めておく必要があります。
  • 一般乗用旅客自動車運送事業
  • 自家用自動車有償運送事業
  • 介護保険法に基づく居宅サービス事業
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業
介護タクシーであれば運輸局、介護事業であれば許可申請先の役所の窓口へ、目的にはどのように記載されている必要があるかを確認しておきましょう。もし適切に記載されていないと、定款・登記の修正が必要になり、余計な費用と時間がかかってしまいます。

本店所在地を決める

本店所在地は、会社の拠点となる住所のことです。

特に制限はありませんので、自宅や店舗などを借りても構いません。会社設立後は、税務署や役所等から本店所在地宛てに郵便物が届きますので、実在している住所であることが必要です。

介護タクシーの場合、自宅を本店所在地としても構いませんし、自宅以外に営業所となる店舗を別途確保しても構いません。

なお、本店所在地の住所は登記されますので、賃貸物件であればあらかじめ貸主に、会社の住所として登記できる物件か確認をとっておくと良いでしょう。

事業年度を決める

1年以内の期間で事業年度を決めることができます。

事業年度は、自由に設定することができますので、会社の業種・業態に合わせて決めましょう。3月決算としてもいいですし、個人事業と同じように「1月1日から12月31日」と定めることもできます。自社の繁忙期を避けるなどして任意の日付を設定しましょう。

ただし、最初の事業年度は会社を設立した日から始まりますので、例えば、事業年度を「4月1日から翌年3月31日まで」とした場合、その年の4月に会社を設立すると、事業年度は翌年3月末までの1年間と最長にすることができますが、逆にその年の3月に会社を設立すると、1期目の事業年度は1ヶ月以内に終わることになります。

介護タクシーの許可は、申請してから許可が下りるまで3ヶ月ほどかかります。何も事業を行うことなく最初の決算期がすぐに来ないように、事業年度を設定するように注意しましょう。

資本金の額を決める

資本金は、会社設立時に出資する金額のことです。基本的に各発起人が出資する金額が会社の資本金額になります。

おおむね「3ヶ月から6ヶ月分の運転資金」が、資本金として準備されていると安心とされています。
運転資金、融資の必要性、許認可の必要性なども考え、妥当な額にしましょう。
介護タクシーの許可を受けるのに、資本金の額は考慮されません。資金の証明は、会社名義の銀行口座残高証明書を提出して行います。

公告方法を決める

公告とは、会社の重要事項を株主・債権者に対して知らせる方法のことです。

公告には「官報に掲載する方法」「時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法」「電子公告」の3種類があり、株式会社の公告方法はこの3つの中から選択します。

一番多く選ばれるのは、「官報に掲載する方法」ですが、近年では自社のホームページへ掲載する「電子公告」も選択されることが多くなっています。

介護タクシー事業では多くの場合ホームページを作成しますので、「電子公告」を選択しても良いでしょう。

会社の機関構成・役員を決定する

機関構成を決める

株式会社の機関は、取締役・代表取締役・監査役・取締役会などがあります。

このうち、取締役・代表取締役は必ず置かなければなりません。監査役を置くか、取締役会を置くかは任意です。

1人で会社を設立するのであれば、「発起人(株主)=取締役=代表取締役」となります。

取締役を決める

取締役を誰にするか決めます。

取締役は、実際に会社を運営する人のことです。取締役が1人の場合は、その取締役が代表取締役になりますが、取締役が複数人いる場合は、取締役の中から代表取締役を1人選ぶのが一般的です。

介護タクシーの場合、社長が自ら運転者(ドライバー)を兼ねるケースが多いですが、その場合は「取締役 兼 代表取締役 兼 運転者」という形になります。

※欠格事由に注意:介護タクシーの許可を申請する際、役員の中に「過去に法令違反で処分を受けた人」がいると、許可が下りません。

また、取締役には任期がありますので、任期を決めます。取締役の任期は通常2年ですが、非公開会社では最長10年まで伸ばすことができます。1人会社や家族経営の会社であれば、最長の10年にしておくのがよいでしょう。

これらの事項が決まったら、①発起人全員で定款を作成して、②公証役場で定款認証手続きを行い、③資本金の払込みを経て、④法務局へ登記申請を行う流れになります。
介護タクシーの開業は、会社を作って終わりではなく、その後の「運送事業許可申請」が本番です。
法人の基本事項を決める段階から、許可の要件を意識して準備を進めましょう。
株式会社で介護タクシーを始める前に、会社設立と許可申請の流れを確認しませんか?
株式会社を設立して介護タクシー事業を始める場合、会社名、本店所在地、事業目的、役員構成、資本金などを決めたうえで、介護タクシー許可申請に進む必要があります。
特に、定款や登記事項証明書の事業目的に「一般乗用旅客自動車運送事業」が記載されているかは、許可申請前に確認しておくことが大切です。
  • 株式会社を設立して介護タクシーを始めたい
  • 定款の事業目的に何を入れるべきか確認したい
  • 法人名義の銀行口座開設や残高証明書の準備を確認したい
  • 会社設立から介護タクシー許可申請までの流れをまとめて相談したい
行政書士法人MOYORICでは、株式会社で介護タクシーを始める場合の許可申請について、事業目的、営業所・車庫・車両・資金要件の確認から、申請書類の作成、運輸支局への申請手続き、運賃認可、運輸開始届までサポートしています。
会社設立前の段階から、介護タクシー許可申請を見据えて必要な準備を一つずつ進めてまいります。
株式会社での開業について相談する
料金・サポート内容を見る
※法人登記、銀行口座開設審査、融資判断、税務判断、ご自身で作成された定款・申請書類・法人関係書類の添削、確認、個別の修正案作成は、無料相談の対象外です。登記申請が必要となる場合は、必要に応じて提携司法書士と連携して進めます。